サッカースタジアム

鹿島アントラーズが示すスタジアム運営の可能性。指定管理者という手段の使い方。

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今回は鹿島アントラーズのスタジアム運営を通して、Jリーグのクラブのスタジアム運営の可能性を見ていきます。




スタジアムの指定管理者としての鹿島アントラーズ

鹿島アントラーズのホームスタジアムは茨城県立カシマサッカースタジアムです。

名称から分かる通り、茨城県が所有するサッカー専用スタジアムですが、鹿島アントラーズはこのスタジアムの指定管理者となっています。

平成15年9月の地方自治法改正で「指定管理者制度」が導入されたことにより、それまで公共団体や都の出資法人等のみが管理できることとされていた「公の施設」の管理を、広く民間の団体に行わせることが可能になっています。この制度によって地方公共団体から指定された管理者のことを指定管理者といいます。

つまり、鹿島アントラーズは茨城県から公の施設である「カシマサッカースタジアム」の管理を行うように指定されたということです。

「カシマサッカースタジアム」は公の施設であるので、指定管理者は公募となります。その公募に、鹿島アントラーズの運営法人である株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シーが応募し、茨城県議会で議決されて管理者に指定されたという経緯となります。

尚、「指定管理者制度」の目的は以下の通りです。

住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設である公の施設について、民間事業者等が有するノウハウを活用することにより、住民サービスの質の向上を図っていくことで、施設の設置の目的を効果的に達成するため
<総務省HPより>

 

スタジアムの指定管理者が管理するものとは?

スタジアムの指定管理者として管理するものを見ていきます。

スタジアムの指定管理者となると、スタジアムの収入と支出の両方を管理する必要があります。ここでは、カシマサッカースタジアムを例に具体的な収入と支出の項目を見ていきます。

まずは収入の項目です。

カシマサッカースタジアムの収入の項目は以下となります。
①指定管理料
②利用料収入
③自主事業収入等
④その他(利息等)

①指定管理料は、施設の管理運営にかかる費用として茨城県から支払われるお金です。指定管理者にとって収入となります。
②利用料収入は、スタジアムの利用者から利用料として受け取る収入です。
③自主事業収入等は、スタジアムを利用した事業により受け取る収入です。
④①~③以外のその他の収入です。

次に支出の項目です。

カシマサッカースタジアムの支出の項目は以下となります。
①人件費(給与等)
②光熱水費
③租税公課等
④自主事業費
⑤その他(事務費・修繕費等)

①人件費(給与等)は、指定管理者としての業務を実施する職員の給与等の支出です。
②光熱水費は、スタジアム運営で発生する電気代、ガス代、水道代の支出です。
③租税公課等は、税金や公のために支払うお金の支出です。
④自主事業費は、スタジアムを利用した事業に掛かる費用の支出です。
⑤その他(事務費・修繕費等)は、スタジアムの修繕や事務手続きに掛かるお金の支出です。

カシマサッカースタジアムの収入と支出の項目を見てきましたが、各項目に責任を持つのが指定管理者の役割です。

また、指定管理者として収入を増加もしくは支出を減少させることは、鹿島アントラーズとしてのメリットにも繋がります。

例えば、スタジアム運営のコストを自助努力で削減することができれば、スタジアム利用料を下げることに繋がります。そして、スタジアム利用料が下がれば、鹿島アントラーズの試合関連経費が下がり、結果として鹿島アントラーズの利益を押し上げることに繋がります。




鹿島アントラーズの指定管理者としての取り組み

ここでは鹿島アントラーズが指定管理者として取り組んでいることを見ていきます。スタジアムの利用者ではなく管理者だからできる取り組みです。

1.売店ブースの改善

指定管理者の取り組みとして、スタジアムのコンコースにある各売店ブースにガスを引き、火を使えるようにしています。

カシマサッカースタジアムは都市公園法の影響を受けないため、スタジアム内で直火が使用できるメリットがあり、このメリットを鹿島アントラーズが指定管理者として実行に移した形です。行政ではなく民間企業だからこそ、実行に移した取り組みだといえます。

カシマサッカースタジアムの「もつ煮」や「ハム焼き」がおいしいのは、鹿島アントラーズの指定管理者としての取り組みの結果といえます。

スタジアムでおいしい物を食べることができれば、スタジアムに訪れた観客の満足度は上がります。このことは入場者数の増加として鹿島アントラーズの収益にも繋がるはずです。

 

2.フィットネスクラブ

スタジアム運営において、試合がない日のスタジアムの有効活用は大きな課題です。

その1つの解決策として、鹿島アントラーズは、カシマサッカースタジアム内に「カシマウェルネスプラザ」というフィットネスクラブを設けて運営しています。また、「カシマウェルネスプラザ」とは別にスタジアム内のコンコースをウォーキングゾーンにして、平日は無料で開放しています。

カシマサッカースタジアムをサッカー観戦する場所だけではなく、日常的にスポーツをするために訪れる場所にするための取り組みといえます。

 

3.スポーツクリニック

スタジアムの有効活用として、カシマサッカースタジアムの敷地内にアントラーズスポーツクリニックを開業しています。

アントラーズスポーツクリニックは、スポーツ整形外科外来と一般整形外科外来の2つの外来があります。このスポーツクリニックで診療を担当するのは、アントラーズのチームドクターとなりますので、プロ選手と同等の治療とリハビリが受けられるメリットがあります。また、このスポーツクリニックは、チームドクターの稼働率を上げることにも繋がっています。

指定管理者という手段を使うために必要なことは?

スタジアムの指定管理者としての鹿島アントラーズの取り組みを見てきましたが、全ての取り組みに共通して言えることは、どの取り組みも、利用者ではなくスタジアムの管理者だからこそ実現できたものだということです。

“官から民へ”という大きな流れの中の1つの施策が、この「指定管理者制度」ですが、鹿島アントラーズのスタジアムの指定管理者は、この“官から民へ”の成功例と言えるものです。

成功の要因の1つは、「指定管理者制度」の趣旨にある民間事業者が有するノウハウを活用できたことにあると思いますが、一番の成功の要因は官と民との違いにあったと考えます。

官と民との違い、つまり行政と鹿島アントラーズとの違いは、その熱意だと考えます。

都市公園法に抵触せず、スタジアム内で火の使用を許可されていたとして、管理者が行政だったとしたら、実際に火を使えるように動いたでしょうか?

各売店ブースにガスを引き、安全に火を使えるようにするためには、実際には様々な対応が必要だったはずです。

それでも鹿島アントラーズを動かしたものは、カシマサッカースタジアムを素晴らしいスタジアムにするという熱意であったのではないでしょうか。

指定管理者という手段を有効に使うために必要なことは、その権限ではなく、熱意である。そう考えます。

鹿島アントラーズの指定管理者としての取り組みはもっと発展していくはずです。今後の鹿島アントラーズのスタジアム運営に注目していきたいと思います。

 

まとめ

・鹿島アントラーズはスタジアムの指定管理者としてスタジアム運営において、様々な取り組みを実践している。
・指定管理者という手段を有効に使うために必要なことは、その権限ではなく、熱意。




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