サッカースタジアム

等々力陸上競技場改修の経緯。川崎でサッカー専用スタジアムが見送られた理由とは?

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川崎フロンターレといえば、2016年度の観客動員数がJリーグの中で5位であり、スタジアムの満員率では2位という、Jリーグでもトップレベルの人気を誇るクラブです。今回は川崎フロンターレのホームスタジアムである等々力陸上競技場を見ていきます。

 

等々力陸上競技場の特徴とは?

等々力陸上競技場は川崎市中原区の等々力緑地の中にある陸上競技場です。主な特徴としては次の通りです。

・川崎市の所有する等々力緑地という公園内にある
・等々力陸上競技場の所有者は川崎市である
・サッカー専用スタジアムではなく陸上競技場である
・等々力陸上競技場の指定管理者は等々力緑地の管理者でもある公益財団法人川崎市公園緑地協会である

つまり川崎フロンターレは等々力陸上競技場の所有者でもなければ、指定管理者でもないため、各試合においてスタジアム使用料を支払って、等々力陸上競技場を使用していることになります。

 

等々力陸上競技場の全面改修への取り組み

等々力陸上競技場が建設されてからすでに半世紀近くが経過しています。半世紀前といえばサッカーがマイナースポーツでしかなかった時代です。その時代に建設された等々力陸上競技場がサッカー観戦に適したスタジアムであるはずがありません。

そこで川崎フロンターレが等々力陸上競技場の改修を望む関係者とともに2008年に発足したのが「等々力陸上競技場の全面改修を推進する会」です。この会の構成団体は以下の4団体です。

①川崎フロンターレサポーター
②株式会社川崎フロンターレ
③川崎市サッカー協会
④川崎市陸上競技場

またこの会には後援との位置づけで、財団法人川崎市体育協会、川崎市商工会議所、川崎市子ども会連盟等の等々力競技場を使用する各団体が名を連ねています。

この「等々力陸上競技場の全面改修を推進する会」が中心となり、約22万人分の署名を集めて請願書と共に川崎市に提出することで、川崎市を動かし、現在の等々力陸上競技場の全面改修という流れになっています。

 

陸上競技場型スタジアムの限界とは?

等々力陸上競技場をサッカー専用スタジアムに出来なかった理由は、「都市公園法」の建ぺい率がネックとなったと言われています。「都市公園法」では、運動施設の総面積は公園全体の50%以内でなくてはならないと定めており、等々力緑地内でスタジアムを作るとそれを超えてしまうという理由です。

等々力陸上競技場も含めた等々力緑地の今後の在り方について議論が行われた「等々力緑地再編整備検討委員会」では、等々力緑地の中での大規模施設の配置を検討しており、サッカー専用スタジアム、陸上競技場、硬式野球場をどのように配置するかも検討されました。但し、最終的に陸上競技場と硬式野球場が残り、サッカーは陸上競技場で実施する結果となっています。

この結果となった要因として、仮にサッカー専用スタジアムを作る場合には、別の陸上競技場を作る必要があり、硬式野球場も含めると前述した「都市公園法」の建ぺい率に抵触してしまうということがありました。

ここで川崎フロンターレがあるサッカーと陸上や野球を同列で検討すべきなのかという疑問がわきます。この疑問に対する答えが陸上競技場型スタジアムをサッカーで利用する場合の限界を示すものです。

サッカーだけでなく陸上や野球も同列で検討しなければならない理由は、等々力緑地は川崎市の所有物であり、等々力緑地再編整備では川崎市の税金が投入されるため、川崎市民の意見を広く取り入れる必要があるからです。

等々力緑地再編整備委員会でサッカー専用スタジアムの可能性を積極的に検討していることから、川崎フロンターレの地域における影響力を認める一方で、川崎市民からの批判も意識しています。それは等々力緑地再編整備検討委員会における涌井委員長の以下のコメントからも明らかです。

「等々力緑地再編整備検討委員会議事録」(涌井委員長コメント抜粋)

・総人口参加率、試合がなくても人々が楽しめる、あるいはスポーツ利用で楽しめるように、本当の意味で「する」だけでなく「見る」「手伝う」の議論を高めたい。そうしていかないと、専門スポーツ団体に特化したものだと市民から批判がある。

サッカーファンばかりではないので、そうした多面的な機能がないと市民の賛同が得られない。単一機能でなく複合機能を加味した施設整備をしてほしい。


等々力陸上競技場をサッカー専用スタジアムに出来なかった本当の理由

川崎市民からの声に広く耳を傾けることを考えると、サッカー専用スタジアムだけでなく陸上競技場や硬式野球場も整備していくことは必要になります。一方で川崎フロンターレがあるサッカーと陸上や野球を同列で検討すべきなのかという疑問がわきます。但し、結果として川崎市はサッカー、陸上、野球を同列に扱ったと言えます。

そして、川崎市がサッカー、陸上、野球を同列に扱ったということこそが、等々力陸上競技場をサッカー専用スタジアムに出来なかった本当の理由です。

等々力緑地再編整備委員会は川崎市民からの声に広く耳を傾けるという大義のもとに、川崎市民からの批判の少ない案を選択しました。川崎市の税金が投入されるからには、川崎市民からの批判の少ない案を選択することは正しいように見えますが、本当に検討しなければならないことが抜けています。 それは収益性の検討です。

等々力緑地再編整備委員会では川崎市の税金の使い方に焦点を当てていますが、本当に大切なのはその施設を使用してどのように収益をあげていくのかです。

施設を作ったとしても、その施設が有効に使用されなければ、施設の管理費用等により毎年赤字を計上することになります。等々力緑地再編整備委員会の議事録を読む限りにおいては、施設を作った後の具体的な収益の計画は一切出てきていません。

川崎市で毎年の赤字を計上しないで施設を運営できる可能性があるとすれば、川崎フロンターレがいるサッカーのスタジアムだけです。川崎市において陸上や野球で収益をあげて施設を運営していくことは難しいでしょう。

もし等々力緑地再編整備委員会に収益性を論点として提案できる人がいたならば、川崎にサッカー専用スタジアムが建設されていたかもしれません。

 

まとめ
毎年の赤字が確実な陸上や野球と、収益を確保できる可能性のあるサッカーを同列にしか検討できなかったことが、等々力陸上競技場をサッカー専用スタジアムに出来なかった本当の理由

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