2018シーズンのJ1リーグの日程が決まりました。日程の特徴としては、フライデーナイトJリーグと称した金曜日開催の試合の導入、そして日曜日開催の試合の増加、それに伴う土曜日開催の試合の減少です。全体としては、金曜日、土曜日、日曜日と分散した試合の日程となっています。
今回はこの日程の分散がどのような影響を及ぼすのかを、2017シーズンの浦和レッズの曜日別の入場者数を参考例にして分析していきます。
浦和レッズを参考例とするのは、浦和レッズが2017シーズン観客動員数1位の人気チームであること、また、浦和レッズはACLの日程の影響で2017シーズンにも金曜日開催の試合があったことから、曜日別の入場者数の傾向を把握し易いと考えたためです。
2017シーズンの浦和レッズの曜日別の試合数は?
2017シーズンの浦和レッズのホーム主催試合について、曜日別の試合数を見ていきます。
リーグ戦、ルヴァンカップ、ACLとその合計のホーム主催試合の曜日別の試合数は表1となります。
一番多く開催している曜日は土曜日の11試合です、全25試合の中での開催率は44%となります。
次に多い曜日は水曜日の5試合で、開催率は20%となります。水曜日は、リーグ戦は1試合だけですが、ACLで4試合開催しています。
2017シーズンの浦和レッズは、その他にも日曜、火曜、金曜と幅広い曜日でホーム主催試合を開催しています。尚、ゴールデンウィーク中の5月4日(木)に開催した試合は、曜日としては木曜日となりますが、表1では祝祭日にカウントしています。
全てのホーム主催試合を平日と土日祝祭日の2つ分類した場合には、平日開催が36%、土日祝祭日開催が64%の開催率となります。
週末開催のイメージが強いJリーグですが、実際には平日開催も多くあることが分かります。
2017シーズンの浦和レッズの曜日別の平均入場者数は?
次に、2017シーズンの浦和レッズのホーム主催試合について、曜日別の平均入場者数を見ていきます。
リーグ戦、ルヴァンカップ、ACLとその合計のホーム主催試合の曜日別の総入場者数、平均入場者数は表2となります。
平均入場者数が一番多いのは祝祭日の5万7447人です。但し、祝祭日の開催試合はゴールデンウィーク真っ只中で開催した鹿島アントラーズ戦の1試合のみで、この試合は注目度が高くチケットも完売となった試合ですので、平均入場者数の参考にはならない例外的な平均入場者数です。
上記の例外を除くと一番平均入場者数が多いのは土曜日開催の3万7518人です。次は日曜日開催の2万7056人です。
土曜日と日曜日という同じ週末の開催ですが、土曜日開催と日曜日開催では1万462人もの差があることが分かります。割合でいえば、日曜日開催は土曜日開催の約72%の入場者数にとどまっています。
次に多いのは、水曜日開催の2万6876人です。但し、日曜日開催とは180人の差しかありません。また、金曜日開催となると2万4042人となり、水曜日開催より少ない平均入場者数となっています。
Jリーグ金曜日開催の不都合な真実とは!?
2017シーズンの浦和レッズの曜日別の平均観客数から予想すると、金曜日開催の試合であるフライデーナイトJリーグはスタジアムの観客動員では失敗する可能性が高いことは明確です。
さらに、2018シーズンは、平均入場者数が多い土曜日開催を減らし、日曜日開催を増やしていますので、全体の総入場者数も減少する可能性が高いと考えます。
Jリーグも過去の曜日別の入場者数データを把握していることを考えると、なぜ全体の総入場者数が減少することが予想されるのに、金曜日、土曜日、日曜日と分散した日程にしたのか疑問がわきます。
要因として考えられるのは、ワールドカップやACLの日程を考慮したということです。また、金曜日開催については、土日の時間をサッカー観戦に費やせない人に対しての新しいアプローチだとJリーグは説明しています。
要因の一つとしては、その通りだと思いますが、別の大きな要因があると考えます。
その別の大きな要因とは、DAZNとの放映権契約です。
試合を放送するDAZNにとっては、土曜日の同じ時間帯の試合が重なって、コンテンツ同士が競合してしまうよりも、金曜日、土曜日、日曜日に分散して放送できた方がより多くの視聴者を集められる可能性が高まります。また、メディアの視聴者だけを考えたなら、金曜日の夜の開催はより多くの視聴者を集められるチャンスといえます。
近年、放映権料が急騰しているイングランドのプレミアリーグ、ドイツのブンデスリーガ、スペインのリーガエスパニューラでも同様のことが起こっています。今のヨーロッパでは、土曜日、日曜日に加えて月曜日開催の試合が主流となっています。
ヨーロッパにおいて、高額な放映権料と引き換えに、メディアの要求に応える形で試合の開催する曜日や時間が決まっていますが、Jリーグにおいても同様のことが起きているというのが実情だと考えます。
Jリーグとしては、スタジアムに足を運ぶ人よりもメディアで視聴する人を重視した試合日程を組んだといえます。それは、入場料収入の減少よりも、放映権収入の増加を選択した決断だともいえます。
このことは、Jリーグにとって、表向きに公表したくない、不都合な真実です。
スタジアムに足を運ぶ人よりもメディアで視聴する人の方が遥かに多いですので、経営の視点で考えた場合には、Jリーグの決断は妥当です。一方で、金曜日開催の試合を増やすことによって、スタジアムに足を運ぶ人が減少することもまた真実です。
そう考えると、Jリーグのホームページで金曜日開催の試合を盛り上げているさまが、まるで不都合な真実を隠しているかのように見えてきます・・・。
<Jリーグ公式HPより>
週末にサッカー観戦ができない
すべての人へ。
明治安田生命Jリーグ フライデーナイトJリーグ。
それは、Jリーグが考えるスポーツ観戦を交えた新たな金曜の夜の過ごし方。
貴重な土日の時間をサッカー観戦には費やせないすべての人のための、新しいライフスタイルの提案です。
これからは、心置きなく楽しめる仲間との飲み会やデートはぜひスタジアムで!
まとめ
・浦和レッズのホーム主催試合では、日曜日開催は土曜日開催の約72%の入場者数にとどまっている。
・浦和レッズのホーム主催試合では、日曜日開催も平日開催も入場者数は同程度である。
・Jリーグが金曜、土曜、日曜と試合を分散させたのは、DAZNとの放映権契約が要因であり、スタジアムに足を運ぶ人よりもメディアで視聴する人を重視したため。