Jリーグ 収入

Jリーグのスポンサー収入のからくり。サッカーの人気チームのスポンサー収入が低い理由は?

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今回はJリーグのスポンサー収入に焦点を当てます。スポンサー収入はクラブ決算の項目では広告料収入となりますので、この広告料収入を分析していきます。

広告料収入とは企業からスポンサー料として受け取る金額のことです。企業はスポンサー料を支払うことで、例えばチームのユニフォームやスタジアムの看板、オーロラビジョン等に企業名や商品名を広告することができます。

広告料収入はJリーグのクラブの最大の収入源ですので、まさにクラブ経営を左右する指標といえます。

 

広告料収入が多いチームは?

Jリーグの各クラブの広告料収入のランキングを見ていきます。

広告料収入のランキングは表1となります。

広告料収入の1位は浦和レッズの25億9300万円となり、2位は横浜F・マリノスの23億6600万円3位はヴィッセル神戸の22億2100万円となります。

1位の浦和レッズの広告料収入は2位の横浜F・マリノスの約1.1倍、3位のヴィッセル神戸の約1.17倍の金額になっています。

浦和レッズは入場料収入も1位のクラブですが、入場料収入の場合には、浦和レッズは2位のクラブの約1.7倍、3位のクラブでは約2.4倍の金額でしたので、それと比較すると、広告料収入の各クラブ間の金額の差は小さいことが分かります。

そのことは、広告料収入1位の浦和レッズと14位のジュビロ磐田を比較しても、約1.65倍の差にしかならないことからも分かります。

海外のサッカークラブの広告料収入に目を向けると、ビッククラブの広告料収入は年々増加していますので、ビッククラブとそれ以外のクラブとの広告料収入の差は非常に大きくなっています。

特に世界的に人気のあるビッククラブは、世界展開を目指す企業にとって非常に魅力的な広告塔となりますので、そのスポンサー契約の金額も拡大の一途です。

例えば、日本の企業である楽天がFCバルセロナとのスポンサー契約で支払った金額は年間5500万ユーロ(約64億円)と言われています。また、横浜ゴムがチェルシーとのスポンサー契約で支払った金額は年間4000万ポンド(約73億6000万円)と言われています。

楽天、横浜ゴムの1社分のスポンサー契約の金額は浦和レッズの広告料収入の合計金額の約2.6~2.8倍となっていることからも、ビッククラブの広告料収入が非常に巨額であることが分かります。

また、ビッククラブ以外のクラブにこれだけ巨額のスポンサー契約を結ぶ企業は通常はいませんので、ビッククラブとそれ以外のクラブとの広告料収入の金額の差は拡大していくばかりです。

 

人気チームと広告料収入の相関関係は?

人気チームであれば、必然的にスタジアムの入場者数が多くなります。スタジアムの入場者が多い状況であれば、そのチームのユニフォームやスタジアムに掲載された広告を見る人が多くなりますので、広告の効果が大きくなります。広告の効果が大きくなるのであれば、スポンサー契約を結びたいと考える企業も多くなるはずです。

したがって、通常はスタジアムの入場者数が多くなると広告料収入も多くなりますので、正の相関関係が存在するはずです。

Jリーグのケースを見ていきます。

Jリーグにおける広告料収入と入場者数の相関関係を見るために、先ほどの広告料収入のランキングに、各チームの入場者数合計とその順位を追加したものが表2となります。

表2を見ると、広告料収入で4位の大宮アルディージャが入場者数合計の順位では16位であったり、入場者数合計で6位のアルビレックス新潟が広告料収入では15位であったりと、広告料収入の順位と入場者数の順位には本来あるべき正の相関関係が存在しないことが分かります。

この広告料収入と入場者数との間に正の相関関係が存在しないことは、Jリーグの広告料収入の大きな特徴と言えます。

 

人気チームの広告料収入が低い理由は?

広告料収入と入場者数との間に正の相関関係が存在しない理由を考えていきます。

Jリーグにおいて、広告料収入と入場者数との間に正の相関関係が存在しないので、入場者数が多い人気チームでも広告料収入が低くなることが起こります。

その理由としては2点あります。

①各クラブの営業努力の影響

各クラブは様々な企業とスポンサー契約を締結するために、日々、営業努力をしています。広告料収入が多いチームは、その営業努力が実った結果と考えるのが一番妥当な捉え方です。

スタジアムの入場者数が多いので広告の効果が高いというポイントはスポンサー契約の提案時に一定の効力を発揮しますが、提案時にアピールできるポイントはそれだけではないです。

例えば、スタジアムのオーロラビジョンを有効に使うことで広告の効果を高めることも提案時のアピールポイントになります。浦和レッズのホームスタジアムでは、GKの西川周作がセービングした時に、シャッターが降りる画像がオーロラビジョンに映されます。これはスポンサーの1つである文化シャッター㈱の広告ですが、試合のシーンと連動させることで、企業にとって魅力のある広告になっています。

その他にも提案時にアピールできるポイントはあります。Jリーグの各クラブは地域のクラブでもありますので、地元のJリーグのチームへの支援は、企業の社会貢献活動の一環としての地域貢献になるという点も提案時のアピールポイントになるはずです。

 

②各クラブの株主の影響

①の各クラブの営業努力の影響は確実にあると考えますが、それだけでは広告料収入と入場者数との間に正の相関関係が存在しない理由としては弱いと考えます。もっと大きな理由がないと、正の相関関係を打ち消すことはできないはずです。

その大きな理由として考えられるのが各クラブの株主の影響です。

例えば、入場者数合計で16位の大宮アルディージャが広告料収入で4位であるのは、大宮アルディージャのスポンサー企業にNTT東日本、NTT docomo、NTT data、NTTアド、NTT都市開発等の多くのNTT関連企業が名を連ねているからです。

これは大宮アルディージャが積極的にNTT関連企業に営業を行った結果ではなく、設立母体となった企業がNTT関東サッカー部であり、現在の大宮アルディージャの株式のほぼ100%をNTTグループの各社が保有していることが影響しています。

NTTグループ各社の親会社となる日本電信電話株式会社のグループ連結の営業収益合計は11兆円以上ありますので、大宮アルディージャの広告料収入の20億7700万円はNTTグループにとっては微々たる金額です。

したがって、NTTグループの各社は大宮アルディージャへの広告の効果等とは関係なく、NTTグループの繋がりを理由として毎年一定額のスポンサー料を支払うことが可能ですし、実際に支払っています。

これは大宮アルディージャにとっては、安定した広告料収入となりますので、大宮アルディージャの経営の安定に大きく貢献しています。

同様のケースは柏レイソルにも当てはまります。柏レイソルが入場者数合計では17位であるにも関わらず、広告料収入で7位であるのは、設立母体となった企業が日立製作所サッカー部であり、現在の柏レイソルの株式のほぼ100%を日立製作所が保有していることが影響しています。

柏レイソルのスポンサー企業に日立グループの各社が名を連ねていることからも、大宮アルディージャと同じ状況であることが分かります。

一方で現在の株主の中心が日本有数の大企業でないチームは広告料収入に苦戦しています。

例えば、入場者数合計で6位のアルビレックス新潟が広告料収入では15位に沈んでしまうのは、アルビレックス新潟には安定的に多額のスポンサー料を支払ってくれる企業が存在しないためです。これはアルビレックス新潟の設立母体が新潟イレブンサッカークラブというスポーツクラブであったことが影響しています。

広告料収入の16位のベガルタ仙台、17位のコンサドーレ札幌、18位のヴァンフォーレ甲府も安定的に多額のスポンサー料を支払ってくれる企業が存在しない点では同じ状況です。

 

Jリーグの広告料収入のからくり

Jリーグの広告料収入の特徴として以下の2つがあることは前述の通りです。
・広告料収入の各クラブ間の金額の差は小さい
・広告料収入と入場者数との間に正の相関関係が存在しない

この特徴を企業の経済合理性の視点で考えようとすると答えは見つかりませんので、前提を変える必要があります。つまり、Jリーグの広告料収入は企業の経済合理性とは別の要因で決まっている部分もあると考える必要があります。

企業スポーツが盛んであった日本において、企業スポーツとは一線を画すJリーグが誕生しましたが、企業スポーツ時代の名残りで企業の経済合理性の判断とは関係なく、現在においても毎年多額のスポンサー料を支払っている企業が存在します。

この企業の存在がJリーグの広告料収入の歪んだ特徴を生み出しています。Jリーグの広告料収入のからくりの正体です。

Jリーグの各クラブにとって、このような企業からのスポンサー料は経営におけるセーフティネットの役割を果たしてきたといえますので、決して悪いことではありません。

但し、セーフティネットがあるがゆえに、経営に甘さが出てしまうのもまた事実です。

Jリーグのさらなる成長のためにも、各クラブはクラブの株主とは関係のない様々な企業からスポンサー契約を結びたいと思われるような魅力のあるクラブを目指すことが必要となります。

 

まとめ
・人気チームの広告料収入が低い理由は、Jリーグの広告料収入は企業の経済合理性とは別の要因で決まっている部分もあるため。
・Jリーグのさらなる成長のためにも、各クラブはクラブの株主とは関係のない様々な企業からスポンサー契約を結びたいと思われるような魅力のあるクラブを目指すことが必要。

※今回の分析では、Jリーグ公式HPの「2016年度(平成28年度)Jクラブ個別情報開示資料」を使用。

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コメント

  1. はし より:

    こんにちは(^_^*)いつも楽しく拝見させて頂いております。
    私は大学でスポーツマネジメントの授業を取っており、今度レポートを提出する際にこちらの表を参考にさせて頂きたいと思っております。
    表1の広告収入ランキングの参考文献か出所がありましたら教えてください。

    1. football-for より:

      「サッカービジネスの教科書」の記事を読んでいただきありがとうございます。
      また、コメントもありがとうございます。
      参考文献の出所は、Jリーグ公式HPの「2016年度(平成28年度)Jクラブ個別情報開示資料」の広告料収入です。
      出典を本文に記載していると思っていたのですが、記載が漏れていましたので本文にも追記しております。
      今後も「サッカービジネスの教科書」に目を通していただけると嬉しいです

      1. はし より:

        お返事ありがとうございました。
        お忙しい所、参考文献を教えて頂きありがとうございます。
        これからも、楽しく拝見させて頂きます(*⁰▿⁰*)
        頑張ってください。

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