Jリーグについて

DAZNの放映権獲得の意味とは?世界に先駆けてJリーグで実現したサッカー放送のパラダイムシフト。

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Jリーグの放映権の獲得により、すっかり有名になった「DAZN(ダ・ゾーン)」ですが、今回はこのDAZNのJリーグの放映権獲得が意味するところを見ていきます。




DAZNを提供するPerform Groupとは?

DAZNとは、Perform Group(パフォーム・グループ)が提供するスポーツのライブストリーミングサービスです。JリーグはDAZNと2017年より10年間、約2100億円の放映権契約を締結しています。

このDAZNは、Perform Groupが2016年に立ち上げたサービスです。JリーグとDAZNとの契約が発表されたのが2016年7月ですので、DAZNにとって最初の大型契約がJリーグの放映権契約となっています。

立ち上げたばかりのサービスであるDAZNをJリーグが信頼して契約したのは、Perform Groupの存在が大きかったと考えられます。いくら莫大な放映権料を提示されたとしても、10年間に渡って遅滞なく支払うだけの企業であるとの確信がなければ、契約はできないためです。

Perform Groupはコンテンツの制作や提供、スポーツコンテンツのライブ配信、オンデマンドサービスを展開する国際的なスポーツメディア企業です。

設立は2007年9月と歴史の浅い企業ですが、世界№1の総合サッカーサイトである「Goal.com」や世界最大級のスポーツデータのプロバイダーである「opta」等も展開しています。

 

Perform Groupの親会社であるAccess Industriesとは?

Perform Groupは国際的なスポーツメディア企業ですが、世界的に見れば決して売上規模が大きいメディア企業でありません。但し、Perform Groupにはさらに上の親会社がいます。

Perform Groupの親会社はAccess Industries(アクセス インダストリーズ)です。Access Industriesはアメリカの投資会社であり、2011年に世界3大レーベルの一つであるWarner Music Group(ワーナー ミュージック グループ)を買収したことでも有名です。

Perform Groupの株式の過半数を、2014年にAccess Industriesが取得したことにより、Perform GroupはAccess Industriesの子会社になっています。

このAccess Industriesですが、1986年にウクライナ出身のLen Blavatnik(レン・ブラヴァトニク)が設立しています。Len Blavatnikは2017年フォーブス世界長者番付の40位にランクしている人物でもあります。

Access Industriesは投資会社として、幅広い事業に投資しており、その投資対象はアルミニウム等の天然資源を扱うUC RUSAL、音楽業界のWarner Music Group、ドイツのファッションECサイト「Zalando」を手がけるRocket Internetなど幅広いです。

Access Industriesが投資会社である以上、その子会社であるPerform Groupに対しても、投資のリターンである利益をシビアに追及します。したがって、Perform Groupは、Jリーグとの大型契約で利益を上げることが可能であるとの明確なプランがあるはずです。




DAZNはどのようなサービスなのか?

DAZNの運営会社を見てきましたが、DAZNのサービスがどのようなものかを次に見ていきます。

DAZNはPerform Groupが提供するスポーツのライブストリーミングサービスであり、サービスの分類としてはOTT(Over-The-Top)サービスです。

OTT(Over-The-Top)サービスとは、インターネット回線を通じて、メッセージや音声、動画コンテンツなどを提供するサービスのことです。OTTサービスの代表例としては、動画配信のYouTube、Hulu、Netflixなどがあります。

OTTサービスは、今まで地上デジタル放送網、BSデジタル放送網、CSデジタル放送網、ケーブルテレビ網を通じてでなければ配信できなかったコンテンツを、インターネット回線を通じて配信するサービスです。

テレビ局という既存のインフラを飛び越えたサービスですので、まさに名前の通りOver-The-Topのサービスと言えるものです。

 

世界に先駆けてJリーグで実現したサッカー放送のパラダイムシフト

Jリーグ放映権がスカパーからDAZNに変わりましたが、これは単純に放映権の獲得会社が変わっただけではないインパクトがあります。

スカパーはBS・CSデジタル放送網を通じたJリーグの配信でしたが、DAZNはインターネット回線を通じたJリーグの配信になりますので、日本におけるサッカー放送サービスの主役が既存のインフラを通じたサービスからインターネット回線を通じたサービスに取って代わられたと捉えることができます。

莫大な放映権料に目を奪われがちですが、Jリーグの放映権に関しては、サッカー放送の前提を覆すパラダイムシフトが起こったと言えます。

このパラダイムシフトですが、サッカーの本場ヨーロッパではまだ起きていません。

例えば、イングランドのプレミアリーグは、2016-2017シーズンから3シーズンの放映権を英国の衛星放送局である「スカイスポーツ」と「BTスポーツ」が獲得しています。また、ドイツのブンデスリーガは、2017-18シーズンから4シーズンの放映権を衛星放送局である「独スカイ」、衛星放送とケーブルテレビのスポーツ専門放送局である「ユーロスポーツ」、およびドイツの公共放送局である「ZDF」が獲得しています。

これは、プレミアリーグやブンデスリーガの放映権料がJリーグとは桁違いに高額なため、DAZNのようなOTTサービス企業が手を出せる金額ではないというのが理由です。尚、日本において、DAZNでプレミアリーグやブンデスリーガが視聴できるのは、日本での放送が、各リーグの海外放映権の枠組みに該当し、放映権料が高額ではないためです。

サッカー放送のパラダイムシフトが世界に先駆けてJリーグで実現しましたが、このパラダイムシフトが、世界に広がっていくのか、それとも日本だけで終わるのかは未知数です。

その答えは、DAZNによるJリーグの放映権獲得の成果に掛かっていると言えますので、Jリーグにとっても、世界のサッカー放送にとっても、10年という長期契約の中でDAZNがどのような成果を出すのか、非常に興味深いです。

 

まとめ

・DAZNとは、Perform Groupが提供するOTTサービス。
・Perform Groupの親会社はアメリカの投資会社であるAccess Industries。
・スカパーからDAZNへのJリーグ放映権の変更は、日本におけるサッカー放送サービスの主役が既存のインフラを通じたサービスからインターネット回線を通じたサービスに取って代わられたという意味で、サッカー放送の前提を覆すパラダイムシフトと言える。




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